福島第1原発の汚染水(アルプス処理水)の
海洋放出に反対します
8月24日、東京電力が福島第1原発にたまり続ける汚染水(アルプス処理水)の海洋放出を始めました。しかし、漁業者など関係者の理解はまったく得られていません。漁業者らとの約束も反故にした海洋放出には全く道理にない一方的な進め方と言わざるを得ません。
政府と東電は、8年前に「漁業者など関係者の理解なしには、いかなる処分も行わない」との約束を福島県漁業協同組合連合会と交わしています。しかし、政府や東電は、これまで海洋放出についての説明や対話の手だてを尽くしてはきませんでした。漁業現場への説明も一切行っていません。それどころか7月には「関係者との信頼関係は少しずつ深まっている」という岸田首相の説明に対し、福島県漁連会長は「何を捉えているのか分からない」(8月8日)と論理のすり替えを批判しています。
8月21日に、岸田文雄首相と面会した「全国漁業協同組合連合会の坂本雅信会長」は、「海洋放出については依然として反対するという立場を堅持する」と明言しています。直近の世論調査(共同通信)でも、海洋放出に対する賛否は拮抗(きっこう)しているうえ、政府の説明が「不十分だ」と答えた人は81.9%、また9割が風評被害が起きると回答しています。また国内だけではなく、中国を始め近隣諸国からの批判・不安に関しても、十分な説明がなされたとはいえない結果です。
岸田首相は、21日の全漁連の坂本会長との会談で「廃炉と処理水排出の完遂まで漁業者のなりわいが継続できるよう、国が全責任を持って必要な対策を講じ続ける」などと主張していますが、既に市場では価格の暴落など実害が起きています。中国の輸入全面停止を「想定外」とした農水大臣の発言は無責任きわまりないものです。
一方、海洋放出の結論先にありきの政府の姿勢を強力に後押ししてきたのが、財界の各団体です。政府が海洋放出方針を決めたのは2021年の菅義偉政権の時です。菅首相(当時)は関係閣僚会議で「処理水処分は廃炉に避けて通れない課題。海洋放出が現実的と判断した」と説明。経済同友会の桜田謙悟代表幹事は「安全性については十分考慮されているのではないか」と歓迎のコメントをしています。
岸田政権に代わってからも、今年7月には、経団連の十倉雅和会長が、海洋放出に関する国際原子力機関(IAEA※)(※原子力の研究開発や実用化をすすめる組織、日本も巨額な拠出金を支出)の報告書をあげて「処理水が安全基準を十分に満たすことを示しており、意義深い」と評価。財界は政府の海洋放出決定を「福島第1原発の廃炉と福島再生を完遂する上で避けて通れない取り組みだ」と後押ししています。
しかし、海洋放出は30年以上続くといわれ、日々90トンずつ増え続ける汚染水をどうすれば減らせるのかが、一番の問題です。国費ですすめられた地下水流入を止める「凍土壁」は効果を示していません。多くの専門家からの指摘を岸田政権は受け止め、早急に対策をするべきです。そして事故で溶け落ちた核燃料の取り出しなど、真の事故収束に繋がる廃炉に向けた道筋も示す責任があります。
原発事故から12年、多くの人が避難を強いられ、苦しみは続いています。今年5月、岸田政権は財界の要求に応えた「原発推進等5法※」(※原発の活用を国の責務とし、60年超の原発の運転期間延長を可能とするもの)を与党、日本維新の会、国民民主党の賛成で可決しました。いのちとくらしを壊す原発推進には反対の声を上げ続けましょう。
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